そんなわけで、人間を取り巻く曜日感覚について少し考えてみる。

どんなわけかというと、コメント欄に書くにはとりとめが無さ過ぎ、且つ、長すぎるというわけである。

28日周期→7日周期説

人間の生体リズムは 28日ぐらいである、なんてことが言われている。潮汐の周期が関係しているなどと考える向きもあるようだ。ただし、周期には若干の個人差があり、その公差は数日ぐらいだと思われる。しかし、人間というのは社会的な生命体であり、他の人と共同生活を営むうちに、無意識にその生体リズムを社会のリズムに収斂させていく能力を有するらしい。(関係ないかもしれないが、職場や学校などで一緒にいる時間の長い女性達は、自然と生理の周期が揃ってきたりするなんてことが起こったりするそうだ。)*1
7曜制というのは、この 28日という生体周期をもとに作られたと考えると合理的である。

月齢基準説

つまり 28日周期説。また、潮汐は人間の生活リズム(生体リズム)に大きな影響を与えていると考える向きもあるようだ。ただしまだまだ充分に科学的な説明とは言い難いように思える。

天気の周期説

天気を注意深く意識していると、よく、同じ曜日が同じ天気になることが連続するという現象が確認できる。例えば、どうもここの所週末になると必ず雨だな、といったような事態。これは、移動性高気圧および低気圧の移動速度がちょうど 3〜4日の周期をもたらすためであり、典型的な天気の流れが続いた場合には、その周期はちょうど 7日ぐらいとなるのだ。
ただし、これは地球上でも限られた地域のみで見られる気象現象であり、人類に普遍的なものではないと思われるため、1週間= 7日の根拠とはなりにくそうである。

大体 7日ぐらいがちょうどいい説

つまり、6日でも 8日でもよかったのだけど、たまたま 7 になった可能性。実際、東洋には「六曜」が存在する。おそらく、人間の適応的収斂能力(前述)からすれば、6日と 7日の差程度ならば、どちらにも適応できるに違いない。現在、世界的に 7曜制が普及しているのは、たまたまローマ帝国が栄えたからとか、キリスト教圏がなんとなく覇権を取っているから、とか、そんな偶然のなせる業なのかもしれない。
ただしこの説は侮れない。よく、「同じ週休 2日なら、週の半ばに休みがあるほうがいいのにねぇ」というようなことが言われるが(つまり、月・火・休・木・金・土・休、というような)、これは実際にやると生産性が落ちる。ある程度連続して仕事をしないと、回転数が上がらないうちに休みに入ってしまう形になり、却って能率は上がらない。勿論、連続しすぎても生産性は落ちる。そうして人類の歴史上における試行錯誤の結果、「働かせる側」の立場からして、最も効率よく労働力を搾り出させることのできるリズムが、経験的に、「6日働き 1日休む」だったのであろう。だが実際は、職種業種にもよるが、これは結構きつい*2。だから現在は、7日周期はそのままに(曜日制までいじると大混乱になるよね)、「5日働き、2日休む」が主流になっているのであろう。

結論的なもの

7日周期ぐらいで、働いて、休んでを繰り返すのが、おそらく生産性が最も高い。そして都合のよいことに、7日というのは、28日という人間の(あるいは地球の)固有周期をきっちり割り切ることのできる数字でもあった。こうして 7曜制は定着した。

で、じゃあなんで、人は月曜病に罹るのか

…これが謎なのである。謎、というか、私にはわからないのである。
というのも、私は月曜病になったことがない。気付かぬうちになっているのかもしれないが、自覚症状が無い。そもそも、曜日だとか月だとかそういうものの区切り、特に始まりと終わりといったアーティフィシャルな区切りに何の価値も見出せない人間であるからして、そのピリオドにおいて体内にも心の中にも、何らの変化が生じないのである。
それでも無理やり想像力を働かせてみるに、それはいわば「メリハリ」なのであろう。普通の、正常な人間は、自分が常に一定の力を発揮できていないことを自覚する。そしてそれは仕事人間としては問題のあることだと考える。しかし実際は、普通の人間の作業効率というのはだんだん上がり、そしてだんだん下がるものである。真面目な人は、自分の思い描いたとおりの、普段の効率が出ていない瞬間を自覚すると、そんな自分に罪悪感を覚え、落胆するだろう。*3おそらくはこの落胆が月曜病の正体であり、心身と理性の乖離と過干渉が悪しき相互作用をもたらすのではないか。そしてその憂鬱だけがいつしか生体リズムに乗り、定着する。
私のように生体周期が把握できないほど支離滅裂かつピーキーであり、接している社会との折り合いを付けようなどとゆめゆめ思わない人間は、それゆえ、月曜病には罹患しないのである。…たぶん。

*1:さらに関係ないかもしれないが、ミニマルな生体周期の収斂現象の例として、心筋の収縮運動が挙げられるかと思う。心筋細胞は、個々の細胞が一定のリズムで収縮を繰り返す性質を持っている。このリズムは細胞によりまちまちであり、細胞を単離した状態で放置するといつまでたってもばらばらなままだが、細胞同士がくっつくとやがて周期を同一にし、ひとかたまりで同じ周期の拍動をするようになるという。

*2:恐らくだが「6働1休」は「過酷な肉体労働において死ぬ人間が増えないぎりぎりの労働強度」なのではないかと考えられる

*3:渋滞のとき自分のいるレーンだけ遅いような気がするのと同様に、平均より快調なペースにある自分というのはなかなか意識されない。かわりにアベレージ以下の自分というのは必要以上に自覚されやすく、且つ、必要以上に自分を傷付けやすい。