ザムドを観て、無性に哀しい気持ちになる。

なんとなく。
普通の生活をしていれば、会いたい人に会う為にがむしゃらに突っ走ったりすることなど、まず無いのだ。それを描くための舞台設定であり、戦争であり、軍人であり、人体実験であり、なのだとすれば、勿論物語としてはそれ自体が目的化していて不可分だろうけど、なんか哀しいね。心にしみこませる為に余計な装飾が、オプションが、必要なのだとしたら、大脳化っていうのはいったい何の性だか、業だか、というような。(物語という地平を全否定して、どうする。)


アニメ作品としては、全般によくできているとは思う。あまり「えー」と思うような場面が無いから、かなり隙無く作りこまれているのだろう。それでも、若干物足りないような気がするのにはいくつか理由がありそうに思った。そのうちのひとつなのかどうだかは知らないけれども、人物キャラクタの解釈がアニメーターにちゃんと受け渡されていないような、そんなような気がした。咀嚼されてない、っていうのか、心で触れ、考えて描いてないのだろうな、っていう。そもそも、スタッフが一丸となってる感じがしないんだよなぁ。アニメだから、アニメだし、っていう部分で、意味不明な諦めみたいなもの? これはもう、仕方ないのかね。そこで歯を食いしばっている場合じゃないのかね。ないんですよね、そうですかそうですよね。
脚本は、よくできていると思う。アレだけ詰めに詰め込んでおいて、あげつらうほどの破綻がない。いい日本語センスしてるのかな。でもやっぱり、詰め込みすぎ、展開急ぎすぎだ。いくらなんでも急ぎすぎだ。別の言い方をすれば、かいつまみすぎだ。
ストーリーに関しては、結局のところ基盤がハイファンタジーであって、フィクションだから、「よかった、生まれなかった胎児はいなかったんだ」(ここで微笑む。心の底に、灯がともったりする。…嘘。しない。)という呪文で現実世界に容易に戻ってくることができる。異形のメカや、地球上では見ることのできないイキモノの動きなどが、「これは現実ではないんだ」と我に返らせてくれるからくり。でも、現実のほうがよほど、生まれてこなかった生命とか、志なかばに捥がれ去った生命とか、そういうのに満ち溢れているんだよね。「命を全うする」って、一体、なんなんだろう。(やばい、戻ってこれてない)


そんなようなあってるんだかあってないんだかわからないような(たぶん的外れもいいところの)けちをつけたりしながら、私はそれをただ消費するだけ。こちらの側のバッファアンダーランにより、 encourage されない。当然ながらむしろ残念なのは私のほうだ。