たまには何かを作る行為をしないと涸れてしまいます。それ老いるということと同義です。

…って何を想像してるんですか。(何を想像させようとしてるんですか>私)
涸れるとか枯れないとか(漢字はわざと変えています)、そういう問題でなしに、まあいまのところしばらく放っとかれるとなんとなくくだらないものがひらめいたり手にしたものをあーだこーだと改造したくなってしまったり、で、そうしてひらめいてしまったらいろいろなものそっちのけで没入してしまうわけだが。つまりあれだ、まだそこまで老いてはいないということであろうか。
で、その没入の結果が、本日はこんな形になったりした。

見てのとおり、スパナ(レンチ)である。片口。ちょっと嘴の長い、変なデザインのスパナ、ということになる。工具的には、強度が心配な雰囲気。すぐ口が開いてしまうんではないか、というような、あんまりガシガシ使えるような感じがしない代物ではある。で、これがどうしたのか、というと、削って形を作ったのが私の仕事。もともと普通に使えるスパナを削って削って…なので、強度は大幅に犠牲にしているが、口の内側にはエッジ取りを含めて一切加工を加えていないから、もちろんのこと使える工具である。
全部やすりで削ったのだったら本当にすごいかもしれないが、流石にそこまでの根性も時間も筋肉の耐久力もない。大体の形はグラインダーで出した。10分もかかっていない。仕上げと呼べるような仕上げもしていないので、こちらも合間を見ながらで都合 30分もかかっていない。
で、それが何、ということになるわけだが。このスパナのポイントは、大きさである。


普通に日常的に工具を使っている人ならもうとっくに気付いているとは思うが、「M3」の刻印、これはつまり ISO (JIS でも結局同じだけど)3mm ネジにはまるナットを締結するためのスパナであるという意味。口巾で言えば 5.5mm 。
要するに、実際の大きさは、こう。

 因みに昭和64年と昭和28年
コイン 2枚分ぐらい。

汚い手指を曝して申し訳ないが、要するにつまむほどのサイズである。全長 45mm くらい。


ミニチュア道具というのはなんとも魅力的なものである。プラモデルなどのスケールモデルとはまた違うカテゴリに属し、その意味するところもかなり違う。豆カメラなども、本物の代償としての役割とはまったく別の意味合いを持っていたりする。道具に限らぬ、たとえば豆本なんてものがひとつの文化としてもてはやされるのも、実用品のミニチュアが放つ魅力ということに他ならないのだろう、なんてことを思ったりする。
思ったりはするが、そういうことを思ってこのスパナを削り出したわけではない。使う為に作った。このスパナでないと締められないナットがあるから、こういうサイズにした。それだけのことである。
ただ、実際に使うのは私ではないし、試したわけではないから実際に使えるかどうかはまだ不明。使えなかったら、柄の部分に何とかして穴を開け、携帯ストラップにでもしようか。とはいえ、工具鋼なのでそう簡単には開けられないだろうが。(やすりで削るより 10倍困難。)