周囲がこぞって私を「感じ悪い人」に仕立てようとしている…そんなことが現実に可能な魔法の杖がある

電車内、端っこの席を陣取り、全睡〜半睡状態をいったりきたり。本当に眠いときというのは却って仮眠がとりにくかったりするものである。で、ふと気が付くと、私の座っているすぐ隣のドア脇の位置に、松葉杖を抱えた女性が。怪我したか何かなのだろう、不慣れな感じで杖さばきもうまくはない。車内はそれなりの混雑率で、空席は無い。というか、一駅ごとにだんだん混んでくる区間である。私はそのまま寝ているのか起きているのかわからない状態で過ごす。
何十分か経過しただろうか、私の隣に座っている男性が、私の頭越しに「座りますか?」と女性に声をかける。私はその声で覚醒状態に移行。女性、断る。で、その男性、また座りなおし、何事もなかったかのように振舞い始める。なんなんだ。もうすぐ降りるから譲ろうとしたとか、そういうことじゃないのか。しかも、今更? 女性がこの位置に来てからどれだけ経ってると思ってるんだ?
ちょっと余談をさしはさむと、松葉杖で行動してみるとわかることだが、電車の中で松葉杖を持つほどの状態の人が「座席に座る」というのは、なかなか勇気とテクニックの要ることなのである。座る為には膝の屈伸運動が必要。これは、意外とバランス感覚を要求される運動である。不安定な電車内で長いものを持ったまま、膝と腰を曲げ、バランスをとりながら目的の位置にお尻を着地させるのは口で言うほど簡単なことではない。そして、座ったらいつかは立たなくてはならない。これがまた足首や膝への微妙な荷重制御なくしては、なしえない動作である。通常ならばなんてこともないが、想像する以上に大変なのである。ましてや、松葉杖を使うほどのコンディションの人である。勿論、そのコンディションの如何に関わるわけだが、健常者が考えるほど「座ったほうが楽」とは必ずしもいえない、これは事実。
もっと踏み込んで言えば、松葉杖を抱えて立っている人に座れと薦めるのは、必ずしも親切とは限らない、ということ。(勿論、大感謝される場合はある、かもしれない。)
でも、言いてぇんだろうな。わかるよ。いい人になりてぇんだろ。わかるよ。
そうこうしているうちに目的の駅に到着、私は席を立って、扉へ向かう。と、私の背後、というか、むしろ耳元至近距離で松葉杖さんの「次で降りますから…」という声が聞こえた。恐らく、私の座っていた真正面に立っていたサラリーマンふうの男性が女性に座れと促したのだろう。
あれか、私が譲らなかったから、座れなくて、それはそれはつらい思いをしていたでしょうに、さあ、やっと邪魔者がどいたから、世界に平和が訪れましたから、悪は去りましたから、どうぞ心置きなくお座りくださいお姫様、ってか。


感じ悪いわ。


ていうか、ほんとすいません、席譲るとかどうとかこうとか考えるのもアレなくらい眠かったんです。死ぬほど眠かったんです。ですから、お願いなんで、そのまま死ねばよかったとか言うな。それはそれで迷惑だっつーの(って生々しい想定やめなさい)。