普及しない理由はいろいろあるんだろうけども

「リポ」ならぬ「リフェ」なるバッテリがあるらしい。LiFe 、若しくは 「鉄リチウム」「リチウムフェライト」とか、「燐酸鉄リチウムバッテリ」(LiFePO4)。公称電圧 3.3V 、2次電池である。


寡聞にして、全く知らなかった、と言ってもいい。あるいは、聞いたことあったのに綺麗サッパリ忘れてしまうほどまでに、情報として希薄であった。


web を漁ってみると、もう既に商品化もされているし、使っている人もいるようだ。曰く「Li-Po のように過熱しない」とか「充電が簡単」とか「安全・安定」… etc. etc. よいことずくめではないか。電圧も 3.3V ならば 公称 3.7V のリチウムイオンポリマーと比較してもリチウム一次電池の置き換えがよりしやすいと言えるだろうし、アルカリマンガン 2本分にも近いからこちらの置き換えにもなりうる。3.3V系 マイコンの電源としても有益に見える。
中身とは全く関係ないけど「LiFe」という名前も、いい。


疑問はむしろ、これほどヨサゲなものが、言われているとおりのヨサゲなシロモノなのだとしたら、何故ここまで全く普及していないのか、という点である。
畢竟、電動ガンマニアしか使ってないじゃないか(笑)


勿論「価格がこなれていない」「技術もまだまだこなれていない」というところはあるだろうし、これらは理由としては充分すぎる。電池の置き換えに常に付きまとう問題として「初期電圧」も無視できない。(3.3V とはいっても初期電圧は 3.8V あるので、対策をしていないガジェットの場合(フィラメント電球やレーザーダイオード、一部の DCモーターなどを電源回路なしに直接駆動するものなど…)単純にリチウム(1次)電池と置き換えようとすると、故障の原因になりうる。*1
しかし、それ以上に何か引っかかるものがある。
想像の域を出ないが、問題はむしろ「Li-Po」との競合状態なのではなかろうか。折角「Li-Po より安全」と言われているのに、混在する状況を作ってしまうと却って危険を招く。充電装置は共用も流用もできないし、LiFePO4 サイドがいかに安全とは言っても、誤って使用すれば確実に寿命を縮めるだろう。電池の互換性が注意書き云々でどうにかできる問題でないことは、歴史が証明している。


要するに「電池」というこの「何に使われるか判らない」「どう使われるか知れたものではない」が故のある種の危険性が、普及の最大の妨げということなのではないかという話。昔だったらそんなの間違ったものを間違ったところで使用したユーザーの責任だったわけだが、「製造物責任」の考え方が普及してしまった(敢えて「しまった」と言おう)昨今では「企業の注意喚起が充分でなかった」だのなんだのと言われて莫大な賠償を請求されかねない、だから開発もやめておきます、宣伝もしません、みたいな。


よいものならば、万難を排して普及してくるであろう。専用電池や特殊用途からじわじわと使われていって、そのうち単体セルとして出てくる、というストーリーなのかもしれない。
客観的に判断して、今はまだ飛びつく時期ではない。 ただ、使われなければ普及もしないし、普及が見込めなければ開発もされない。現状は、閉塞状況にある。何かこう一発、ブレークスルーが必要だ。


というか、折角買った Li-Po タイプの RCR123 全然活用できてない私が言う科白ではない。

*1:…とは言ってみたものの、そういうケースは現実にはまず無いんじゃないかなぁ、という気がする。あったとしてもそれはよっぽどだ。 ただし、SureFire には使うなよ、みたいな注意書きがあったりして、それはなんか真実味がありすぎる話なんで、ちょっと嫌だ。「常識で考えて、あんな阿呆みたいに高価なサバイバル品が過電圧対策回路持ってないわけ無いでしょ」というような「常識」が、いかにも通用しない雰囲気。